既存建築物における増改築等の取扱いについて

社団法人 日本医療福祉建築協会
法規委員会
2008年5月8日


 昨年6月の建築基準法改正により、医療福祉施設の増改築に支障が生じる場合が出てまいりました。これにつき当協会では、昨年より法規委員会を通じ国土交通省住宅局との協議を進めた結果、今春、住宅局長宛の請願書(資料1)を提出いたしました。
 これに対し、4月17日に国土交通省より一定の対応策が提示されましたので、概要の周知をいたします。

1.これまでの問題点
 医療福祉施設では、老朽化や医療制度等の改正に適合するための手法として、既存施設を運営しながら順次増改築を行い、施設更新していくことが基本でした。これまでは、運用としてエキスパンションジョイント等で建物が分離されていれば増築を行うことは可能でした。
 ところが、昨年の基準法改正により、確認申請の厳格化と構造基準の明確化が行われた結果、既存建物の1/2以上の増築を行う際には、現行法規への適合が厳格に求められるようになりました。近年竣工したばかりの建物や、耐震補強を行ったばかりの建物まで既存不適格建築物となる状況であり、さらに新構造基準では仕様規定が明確化された結果、既存の建物を新構造基準に適合させるような合理的な補強方法等がないという状態でした。このため多くの医療福祉施設(主にRC造の施設など)では増築計画に支障をきたすことが想定されました。

2.1/2以上の増築時の対処方法
 このたび国土交通省より、既存部分を段階的に改修できる「全体計画認定制度」を弾力的に活用し、1/2以上の増築を可能とする手法が提示されました。(資料2〜4)
 全体計画認定制度は、平成17年6月1日「建築物の安全性及び市街地の防災機能の確保等を図るための建築基準法等の一部を改正する法律」が施行され、既存不適格建築物に係る規制の合理化の観点から、建築基準法第86条の8の規定により創設されたものです。
 しかし、これまでの全体計画認定では、(1)全体計画の期間が原則5年以内と短かったこと、(2)申請時に確認申請と同等の書類が求められ、不確実性のある将来計画に対し過大な負担を必要としたこと、などの理由から、現在まで全国で50〜60件ほどしか申請されていませんでした。
 このたび提示された措置では、(1)の計画期間に対しては、既存建築物が新耐震基準などに適合し、エキスパンションジョイント等で分離されていることなどを条件に、全体計画の期間を20年程度の長期間で認めるよう「全体計画認定に係るガイドライン」の改定が行われました。
 (2)については、既存建築物が新耐震基準などに適合していれば、全体計画認定の申請時に法20 条の規定の審査に必要な図書(構造図、構造計算書等)が省略できるという大臣認定の取得が行われました。この認定証は、国土交通省のHPに掲載され、全体計画認定の申請者はこれをダウンロードして使用することが可能となっています。(資料4)
 これにより、既存建物が新耐震基準などに適合していれば、当面は現行の構造基準に適合していない状態で増築等を行うことが可能となりました。

3.今後の問題
 増築問題に関する障害が緩和されたとはいえ、今回提示された措置は、根本的な解決法を示すものではありません。全体計画完了時点では現行法規への適合が求められるため、ある意味では問題の先送りをしたものといえます。今後、国土交通省としても法改正を含めた対策を研究していくとのことです(例えば、新構造基準へ適合するための合理的な補強方法の提示を行うなど)。
 当協会としても、今後ともこの問題を注視し継続的な情報収集と提供を行っていく予定です。


参考資料

資料1.医療福祉施設の増改築問題に係る改正基準法の解釈是正について(請願)

資料2.新耐震基準適合建築物における増改築の円滑化について
→ 国交省ホームページ参照
  http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/shintaishinzoukaichiku.pdf

資料3.全体計画認定と図書省略認定を活用した増築等の手続

資料4.全体計画認定に係るガイドラインの一部改正について
→ 国交省ホームページ参照
  http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/zentaikeikakunintei.pdf


以上

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