1999年医療福祉建築賞

稲城市立病院

所在地  東京都稲城市大丸1171
稲城市立病院
病床数  290床
延床面積  18,519㎡
竣工年月  1998年3月
開設者  稲城市
管理者  稲城市
設計者  ㈱共同建築設計事務所
施工者  鹿島建設㈱


【選評】

近年稀に見る話題作であり,選考委員会の議論を最も長時間占領した.一口で言えば「完璧に練り上げた病棟平面計画・病室平面計画」であり,そのことが他部門に及ぼした影響についてであった.
4床室と2床室を交互に組み合わせ,全てのベッドに窓を設けて個室並みの居住水準・プライバシーを実現し,狭いながらきめ細かく配慮された分散便所・手洗いを設けた,いわゆる個室的多床室の提案である.また,三角形病棟の中央に配置されたナースステーションとナースコーナーが,一体的に配置されたHCUとの関係も含めて,見事に看護動線短縮に貢献している.同一階2看護単位の中央の処理も明快である.エントランス周りのゆとりと,外来診療部の分かりやすさも良い.
計画上の問題点としては,病棟平面が優先で基壇部分にしわ寄せがきているとか,免震構造でコンパクトにまとめているが(狭い敷地条件もあって)将来の成長変化に対応しにくいとかの意見があった.さらに,計画面での明快さに反して,デザイン面で外観の暗い色彩とか,エレベーターホールの息詰まる狭さとかの不満意見もあった.
個室的多床室の是非をめぐっては,看護の専門家を交えた激しい議論があり,ベッド同士が平行でない違和感と,それでこそ実現したプライバシーとに評価が分かれたが,今後の患者調査が待たれるということで一致した.