2008年医療福祉建築賞

岡山県精神科医療センター

岡山県精神科医療センター

所在地 岡山県岡山市鹿田本町3-16
病床数 216床
延床面積 14,590㎡
竣工年月 2006年1月
開設者 地方独立行政法人 岡山県精神科医療センター
管理者 地方独立行政法人 岡山県精神科医療センター
設計者 日建設計・倉森建築設計事務所 設計共同体
施工者 蜂谷工業・小倉組 建設工事共同企業体
写真撮影 SS東京
【選評】

 県の精神科救急医療の中心であるこの病院は,岡山駅にも近く,挟まれた2つの街路をつなぐ形ともなっている.
 1階はどちらかといえば抑えた重々しいアプローチである.外来・救急・デイケア・司法といった4つのブロックが配置され,その間をライトコートのあるパティオが通り抜けている.しかし,建物の中に入り2階からの病棟に出ると風景は一変する.緑豊かな中庭とステップガーデンにより,町の中の喧騒を忘れさせてくれる空間が広がる.各階にも設けられたこれらや半屋外空間は,四季折々の木々を眺め,風や季節を感じることができると共に,患者が見守られながらも独りになれる空間でもある.
 精神科病院の複雑さは,様々な精神疾患,状態,年齢,性差,さらに各患者数の違いという多様な条件に,ひとつの施設で対応しなければならないことである.ここでは,半屋外空間や稼動間仕切りなどを活かし,様々な状態に対応できる多様性が担保されている.院内事故を想定し施設的に工夫した箇所は,精神科入院患者の特性に合わせて考慮され,作りこまれている.建築としての構成や,居住性・癒しの空間は確保されながら,医療側の複雑なプログラムを丁寧かつ明快に解決していった質の高い作品である.