2012年医療福祉建築賞

特別養護老人ホーム 第二天神の杜

特別養護老人ホーム 第二天神の杜

所在地 京都府長岡京市奥海印寺竹ノ下19
定員 60名
延床面積 3,336 ㎡
竣工年月 2010年4月
開設者 社会福祉法人 長岡京せいしん会
管理者 社会福祉法人 長岡京せいしん会
設計者 ㈱ゆう建築設計事務所
施工者 ㈱鍜治田工務店
【選評】

 当該法人はこれまでも特別養護老人ホームにおいて全室個室ユニットケアの運営をしてきていた.そこで蓄積してきた高齢者ケアのノウハウを,本施設のハード面において遺憾なく発揮しており,全体の空間構成からディテールにいたるまでこだわり抜いた施設となっている.
 1フロアーは共通の談話コーナーを挟んで2つのユニットで構成されており,3層にわたって合計6つのユニットが配置されている.それぞれのユニットは異なった雰囲気の玄関とスタッフ用の出入り口をしつらえている.各ユニットの計画において浴槽の種類,居室とトイレの扉・居室入り口まわりの取手のデザイン,各室に設置された介護や利用者のプライバシーを配慮したトイレ・洗面台の細かなディテール等入居者の多様な生活スタイルを可能にする配慮がなされており,各所に仕掛けられた数多くの収納,直線的(施設的)な廊下を感じさせない袖壁のデザインなども含めて,ひとつひとつが丁寧な造りとなっている.
 また,運営においても毎月10 回を超える様々なイベントをユニットの内外において行っている.そのため設定された施設内や施設周辺のセミパブリック,パブリック空間は頻繁に活用されているようであり,このことにより入所者の日常生活の場がユニット内,施設内,そして施設外へと段階的に広がりをみせている.それに加えて施設建設を地域の住民に理解してもらうため,地域に施設整備の情報を提供し続けた計画プロセスや現在の施設運営も,高齢者施設の整備における問題点をうまくクリアした事例であり,オーソドックスな構成ではあるが完成度が高い施設として評価した.